飛べ!フェニックス(ロバート・アルドリッチ、1965年、アメリカ)

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きっとフェニックス号に飛べっていうような映画なんだろうな、きっと大勢の男たちが過剰なまでの汗を流しながら奮闘する映画なんだろうな、と思って見てみたら、本当にそのとおりだった。

あの、もう本当に、トラウマになるかと思うほどに恐ろしかった『ふるえて眠れ』の次の作品。恐ろしすぎる女たちの映画のあとに、アルドリッチは傷らだけの男たちを撮った。

 

不時着した砂漠で男たちががなり立てながらがんばる、という映画だった。砂漠の物質感がとてもよかった。その風景を見ているだけでも、徒歩圏内にはもう絶対にどんな希望もない、というのがひしひしと感じられるようだった。

そして、不協和音を奏でながらもどうにか希望に向けて前進していく男たちの姿、なかなか覚悟とまではいかないけれど、渋々とがんばっていく姿の情けなさ、力強さ。長びく砂漠生活に疲労をどんどんとためていき、顔の皮膚はただれていき、そして見せる重すぎる足取り。一挙手一投足がしんどい、というような倦怠感。どんくささ。素晴らしかった。飛行機の部品を、そして飛行機自体を引っ張っていくときのあの運動になりきらない運動。こんなに緩慢なあれこれの運動を画面に定着させた映画はどれだけあるだろうか。どういう状況で撮影されていたのか知らないが、実際にものすごい疲労を与えながらおこなわれたようにしか見えない。ジェームズ・スチュアートの愚かさが素晴らしく愚かだった。ハーディ・クリューガーもまた、素晴らしく愚かだった。もうちょっとスマートにリードできないものかと。彼はマネジメントについて真剣に勉強するべきだ。そしてまた、彼が航空機のデザイナーではなく、要はラジコンのデザイナーだったと知らされるシーン。「うわあ…こいつマジキチだ…」という、あっけにとられたジェームズ・スチュアートとリチャード・アッテンボローの絶望的な表情がまったくもって素晴らしい。

 

そうなるともう、ラストは気持ちがよくて仕方がない。浮いた。飛んだ。オアシスだ。素晴らしいじゃないか。フェニックスが飛び立った瞬間、彼女と二人で拍手した。

 

どうでもいいけど、邦題のエクスクラメーションマークの半角っぷりが気になって仕方ない。


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