ザ・タウン(ベン・アフレック、2010年、アメリカ)

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岡山にはタウン情報おかやまという月刊誌があり、とてもよく読まれている。扱い方にもよるがこの雑誌に載った直後は店の集客にもけっこうな影響が出たりする。本当によく読まれている。岡山で一番読まれている雑誌と言っても言い過ぎではないんじゃないかというレベルで読まれている。本屋はもちろん、コンビニにも平積みで置かれていて、それはもう、みんな読んでいるんじゃないかっていうぐらいに読まれている感がある。彼女の友だちは車にこの雑誌を置いているらしく、それをめくりながら今日はどこに行くかなみたいな算段をつけるらしい。それはもう、読まれている。

そんなタウン誌には決して載らないような、強盗稼業の青年たちの姿がこの映画では描かれているわけだけど、なんといってもタイトルがいい。町。冒頭の町をとらえた空撮の画面は、そのあと何度か繰り返されるうちに、何か、青年たちを町から出させないための監視カメラのような様相を帯びてくる。そしてこの映画においてカメラがこの町から出ることは絶対にないだろう、ということがにわかに確信される。と思っていたらラストにベン・アフレックが髭を生やしてリゾートみたいなところでのんきな顔してたそがれていたので笑った。

それはいいとして、つい先日偶然見かけたタワレコのフリーペーパーの連載か何かでベン・アフレックはイーストウッドの正当な後継者だ、みたいなコラムを読んでいろいろとふーんと思っていたのだけど、この人は本当に立派な映画を撮るなあと、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』に続いてとても感心している。ベン・アフレックといえばアルマゲドンの人、らしい、というぐらいしか知らず、アルマゲドンを見たことがないので驚くべきことに顔もわからず、見終えてから何日もしたあとにアカデミー賞のニュースで写真を見、「あ、ベン・アフレックだったんだ、主役」と知ることとなった。ちなみに『アルゴ』はなぜか(なぜなんだろう)中四国での上映がなかったのでまだ見ておらず、DVDか、と思っていたら受賞記念で上映されるとのことで、この日曜にでも見に行く予定だ。とても楽しみだ。

 

それにしても、本当に、冒頭の銀行強盗シーンからまったくもって充実していて、のちに重要人物になる銀行の支店長レベッカ・ホールの指と声のふるえを横から捉えたところがとてもいい。横顔が美しいしこちらまで緊張してくる。最先端の強盗はそんなふうに証拠を残さないよう気をつけるのか、ととても勉強になる。そして何かと荒っぽいことになってしまうジェレミー・レナーがまたよくて、なんだか荒ぶる鬱陶しいやつだなあと思いながら見ていたのだけど、最後の、諦めと諦めの悪さのないまぜになったような、突進することしか知らない牛みたいな、あの郵便ポスト裏の一連の動き、「ファッキュー」と絶叫しながらの壮絶と言って差支えのない死に様、素晴らしく格好良かった。

なんにせよ今はとにかく『アルゴ』が楽しみです。


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