トマス・ピンチョン/逆光

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去年の末から読み始め6月末、やっと読み終えることができた。上下合わせて1600ページ超とは言えまさかこんなに掛かるとは思わなかったというか、度重なる浮気の果ての読了。不徳のいたすところとしか言いようがない。

期間的に飛び飛びの読書だったこともあり、あとは何十人規模の主要(!)登場人物と脱線に次ぐ脱線の語り口にもやられ、あるいはあまりに格好良すぎて惚れ惚れする描写に釘付けになって、物語を追うことはどんどんできなくなって途中でほとんど放棄して、いったいどんな因果でこの人こんなことになっているのか、まったく覚えないまま読んでいたのだけど、この小説を巡る私の行為は、ものすごい複雑で巨大な要塞というのか城というか、とにかく何か大きな迷宮的なところをひたすらに歩き続けるようなものだった。見えているのは目の前だけという。

ピンチョンが構築した諧謔と感傷と博識の途方もない城の中で、その都度その都度の、目の前に現れてくる景色に目を奪われ、少し歩いたら疲れて休み、また歩き出して次の角を曲がったら再び見たことのない景色に出くわして、という繰り返しだった。『失われた時を求めて』を読んでいたときに似た、登場人物たちの歴史や時間が自分の生の記憶として堆積していって、それらが何かの刺激でふわっと浮かび上がってくるというような、そんな体験となった。いやもうとにかく、目がくらむというのはこういう感じですね、という感じでした、ということでした。

 

ピンチョンどれどれ、という方はこのエントリーを読むといいかもしれない。読む気が起きるかもしれないしなくすかもしれない。
読みあぐねている人のためのピンチョン入門 (逆光 – トマス・ピンチョン) – 青色2号

 

逆光〈上〉 (トマス・ピンチョン全小説) 逆光〈下〉 (トマス・ピンチョン全小説)

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