6月、終わり

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前提としてあったはずの体というか肉体というか身体というか身体というとおおげさというか苦手なので体か肉体がその前提のはしごを外されて、ふいに違和として現れるときがたまにあって、要はひたすらにむずむずというか、もやもやというか、何かそういった感触というかいややっぱり違和として急に存在をアピールしてくるという状態で、そうなったとき本のページをめくる手すらも、煙草の煙を受け止める喉すらも、あるいは半袖が掛かる肩やジーンズの当たる太ももすらも、メガネの掛かる耳、あるいは鼻梁すらも、変である。体から抜け出すか、体がなくなるか、どちらかしか逃げ道はないような感覚にとらわれる。当然、この打鍵をしている指もおかしいし、そこからの延長にある腕も、気持ちが悪くて仕方がない。どうにかその状況に対処しようとして自分にできることはストレッチだけで、でも結局それはなんの解決にもならない。体に、妙な力が入っているのだろうかとアルコールを摂取してみるけれども、今のところそれが功を奏しそうな気配もない。寝て起きればなくなるし何かに没頭すればいっときは失せるのだけど、意識し始めるとこんなに厄介なことはない。

 

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店にいると知らないお客さん同士が話し始めてけっこう長く話すというシーンをよく見かける。そこで発揮される人々の社交性に毎日のように驚かされるしほとんどおののく。自分もかつてそういうときがあったような覚えがあるのだけど、漸進的にそういう能力がなくなっていくような気がする。人と何を話したらいいのかまるで見当がつかない。トピックなどどこにも見当たらない。
 

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ビールを二缶飲んだら眠たくなってしまった。友だちたち。かつてなんと呼んでいたのかも思い出せない友だちたち。


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