キートンの大列車追跡(バスター・キートン/クライド・ブラックマン、1926年、アメリカ)

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昨夜バスター・キートンの『キートンの大列車追跡』を見た。先日見た『キートンの探偵学入門』も抜群に面白かったのだけど、キートンのとんでもないアクションと壮大な機械装置が融合するとこんなにもとんでもないことになってしまうのかと文字通り目を見張った。眠いのなんて完全にどこかに消えてひたすらに画面に見入った。

 

本作は機関士に扮するキートンが北軍の列車強盗の連中を追いかけて恋人を取り戻し南軍を救うヒーローになるという顛末の話だけど、ひたすらに横移動で撮られていく機関車のスピードと猛々しさと、その画面の中であっちに行ったりこっちに行ったりちょこまかとハードに動きつづけるキートンのアクションがとにかくすごくて、線路に横たえられた木材をぎりぎりのタイミングでのけるところに限らず、ほんとうにほんの一歩間違えれば死ぬんじゃないの、という危険な行為を70分間おこない続けている。そしておびただしい数の兵士たち、馬たち、大砲、燃える橋から落下する機関車。全編に漲るスペクタルの様相は喜劇という言葉の枠を軽々と飛び越えて、ただただ、なんだかもう、とんでもない。(言葉にならないので見てください)

 

それにしても機関車のこのスピード感はなんなんだろう。私に滂沱の涙を流させた大傑作、『アンストッパブル』(トニー・スコット)の素晴らしい列車が屁のようにすら見えてくるほど速く、ヴィヴィッドで、このうえなく危険で愉快な乗り物だった。先日から引っ張っているジョン・フォードの『アパッチ砦』の馬もそうだけど、速さというのは撮影やCGの技術の発達とは全然比例しないのかもしれない。

 

サイレントを見ていると、自分でも信じられないほどに無邪気に笑える。アミール・ナデリの『CUT』でのシネフィル東京の上映会で観客の人たちが実に健やかに笑っているのを見て、さすがにこんなことはないだろうとちょっと気持ち悪く思っていたのだけど、サイレントを、というかバスター・キートンを見ている時の私はまさにあの健やかさで笑っている。不思議なことだ。

 

『キートンの大列車追跡』 1/4 ‐ ニコニコ動画(原宿)

・Sherlock Jr. (1924)(『キートンの探偵学入門)

http://video.google.com/videoplay?docid=-8074699069179823154

 

これほしい。けど高い。

バスター・キートン自伝―わが素晴らしきドタバタ喜劇の世界 (リュミエール叢書)

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