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けっきょく最後までうまく寝付かれず眠いまま一日が始まって眠いまま一日が進行している。そうなると今日も昼寝をしたいように思うけれどそうともいかないような予定がはだかっているように思われる。今日もひどい夢を見たような記憶があるが、それは見ていない夢かもしれなかった。「夢の上に高い銀河が涼しく懸った。」夢のうえに高い天の河が涼しく懸った。「やがて日が暮れた。昼間からあまり車の音を聞かない町内は、宵の口から寂としていた。夫婦は例の通り洋灯ランプの下に寄った。広い世の中で、自分達の坐っている所だけが明るく思われた。そうしてこの明るい灯影に、宗助は御米だけを、御米は宗助だけを意識して、洋灯の力の届かない暗い社会は忘れていた。彼らは毎晩こう暮らして行く裡に、自分達の生命を見出していたのである。」

洋灯の力の届かない暗い社会をわすれる。

漱石の言葉がすみからすみまでみずみずしくて『それから』にしても『門』にしてもうつくしくてうれしくてしかたがない。ねむい、お客さんの話し声が聞こえている、昼の定食屋をやりながらこれをやっている。お客さんの話し声が聞こえている、みんな真剣に生きていてうれしい。真剣で一生懸命に生きていて応援したくなる。みんなが大好き。好きで好きでしかたがない。ひとりひとりに好きであるこの思いを伝えたい。ひとりひとりがひとりひとり大好きでそれぞれへの思いでこの胸ははちきれそうに好きだ。眠い、なにもそのうちおこらなくなる。なにもかんもがそのままどこか遠くへうっちゃられる。なんもかんもがここから遠くに離れていってもう一瞥もこちらにくれるようなことはない、だれからもわすれさられて洋灯の力で照らしたいとほんとうは切望するもなにも光らないでこのままひかりはちいさくちいさくしぼんでいって、しまいには小さな点になってしまった、もはやなにもあかるくない、そういうふうにじきになる。この仕事がおわったら遠くまで暮らしていることから遠くまで暮らしていることから遠くまで暮らしていることからこちらから離れてしまいたい、向こうが遠くに離れるならこちらが先手を打ったら傷つく順序があべこべになるからそちらのほうがつごうがいいからそうしたい、という以上どこからだろうかどこからも、なにもひとつも頭が考えているわけでもなく特に暗い思いをいだいて暮らしている今日というわけではないけれど、暗い言葉を打ち付けようと思えばどうとも打ちつけられるものだと思いながら打ち付けたらしかった。ところで先般からおこなっていた省みない打鍵記事を読み返せるものなら読み返してみようと読み返してみたところ、嘘でも自分が打ったものだからいけるのか、意外によその人でも同じようにいくのか、音として随所に入ってくるものでどうにか文章というか言葉が頭のなかで鳴るものだなと、そのいびつな音の鳴り方はちょっと他では感じないもののように思われて、その響き方をとても愉快に思った。いびつに、いびつに、いびつに進みながらふと音があらわれるようなそんな瞬間があって、その瞬間の心地がとても面白かった。眠い


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